日々発見のあれこれ日記 tosa35pmkk’s blog

★日々感じたことを綴っています★

夏子の後悔日誌・第22話

 冬休みが始まった。

 私は午前中、じっちゃんたちの農作業を手伝い、午後からは山口君と『ノンノンスタイル』の練習に励んだ。 3学期はひとまず1月に3回、2月に3回、クラスのみんなの前で漫才をご披露する予定を立てていた。けれど、大きな問題に行き当たった。TSUTAYAで借りてきた『吉本漫才特集』のDVDにはノンスタイルのネタがひとつしか入っておらず、M-1グランプリの録画にも『ホラー映画』以外にはもうひとしかないのだ。ネタのストックが全然足りない……!

 どうしようかと悩んでいた私を、なんとあの栄次が救ってくれたのだ。栄次はTSUTAYAのレンタルコーナーにもまだ並んでいない『NON STYLEにて』という単独公演のDVDを、誇らしげに抱えて我が家にやってきた。

「これ、どうしたの!?」 驚く私に、栄次は胸を張って言った。「買ってもらったのよ」 「誰に?」 「ママにだ……」 (※思わずクスッと笑ってしまうけれど、栄次は両親のことを『ママ』『パパ』と呼んでいる。両親がいない私には、その言葉がなんかくすぐったかった…)

「どうして買ってくれたの……?」 尋ねると、栄次は少し照れくさそうに後頭部をかいた。

「お前から『一緒にノンスタイルの漫才をやらないか』って誘われた時、正直オレ、ノンスタイルのことよく知らなかったんだ。だけど、この前の終業式でお前たちの漫才を見たらすっごく面白くてさ……。TSUTAYAの店員さんに聞いたら単独ライブのDVDがあるって言うから、買ってもらったんだ。まあ、今年のお年玉はなしになりそうなんだけどな……」

「ねえ、これ貸してくれない!?」 私が目を輝かせて頼むと、栄次はコホンと咳払いをした。

「そのつもりで持ってきたんだよ。お前には、オレ、責任を果たさないといけないからな……」 そう言って、栄次は私の頬に貼られた大きな絆創膏をツンと指さした。

「これから丈司(山口君)と練習するんだろ? 3学期、楽しみにしてるからな!」 格好いい捨てセリフを残して、栄次は帰っていった。

 DVD『NON STYLEにて』のパッケージを見ると、そこには8つもの演目がズラリと並んでいた。これはありがたすぎる!(栄次、本当にありがとう……!)と心の中で感謝しながら、山口君の到着を待った。

午後2時過ぎ、山口君がやってきて、さっそくふたりでDVD鑑賞会を開始した。 やっぱり腹がよじれるほど面白い!

 まずは1月に披露する3つの演目として『迷子』『いじめ』『探偵』を選んだ。それからは、DVDを巻き戻しながらセリフを書き起こし、小学生の私たちにはそぐわない内容を削り、代わりに学校生活で起こる身近で面白いエピソードを組み込んでいく作業をくり返した。 アイデアが次から次へと溢れ出し、「ああでもない」「こうしよう!」と夢中で話を交わす時間は、本当に楽しかった。

  お正月の三が日、山口君はお母さんの実家へ帰省するため練習はお休みになった。 テレビをつければ、M-1王者となったノンスタイルが引っぱりだこで画面を賑わせている。 笑い転げながら画面を見つめる私に、ばっちゃんがポツリと言った。

「夏子たちも、ノンスタイルの物まねだけじゃなくて、自分たちの言葉で漫才を作ってみたらどうだい?」

その一言が、私の胸にカツンと響いた。

 (そうだ……! 自分たちだけのオリジナル漫才を作ろう!)

 三が日が明け、田舎から戻ってきた山口君にその話をすると、「それ、イイね!」と大賛成だ。ただ、いきなりオリジナルに挑むのではなく、まずはノンスタイルの完コピをあと2回やって『ボケとツッコミ』の絶妙な間(ま)をしっかり覚えてからにしようということになった。

 台本の担当は、私だ。ばっちゃんに言われてから、ずっと考えていたテーマがあった。

 タイトルは『野菜の不思議』。

 農家で育った私は、普段から「野菜たちって、どんな気持ちで毎日畑で育っているんだろう」と考えていた。その溢れる思いを漫才で表現しようと思ったのだ。

・太陽のありがたさに感動する野菜たち ・子どもに嫌われがちなニンジンの切ない叫び ・「キュウリが嫌い」という大人たちへの逆襲 ・「甘くなりたい!」と健気に努力する玉ねぎの思い ・強烈な匂いを誇りに思っているニンニク ・イノシシに中途半端にかじられるスイカの無念 ・ほんとうは赤くなりたくないトマトの悩み

 次々と湧き出てくる野菜たちの声。ノートを広げ、ノンスタイルならこのボケをどう演じるかな、山口君ならどんな風にツッコんでくるのかな…などと想像しながら、私は夢中でノートに台本を書き続けた………

お正月・お笑い番組は本当に楽しい!